説明
Drapers Worsted from 1953
「60年代の生地は最高だ。50年代の生地はもっと素晴らしいが、もう存在しないものの話をしても仕方がない」
ため息混じりに話していたのは、かのアントニオ・パニコだ。彼には常に、確固たる意志があった。それはいわば強すぎるほどのこだわりだった。アントニオは軽くてしなやかな生地を敬遠し、その代わりにビンテージを愛した。力強く、どんな時代にも屈しないようなビンテージのウーステッドだ。
しかし彼が50年代の生地について話したときの表情だけは、私は生涯忘れないだろう。あれは初恋の彼女を思うような表情だった。そして私がある生地屋でこのビンテージ……1953年製のドラッパーズを発見したとき、私はその感情を理解した。
これはLa Storia 歴史そのものだ。そのことを感じずにはいられなかったからだ。
これはまるでピラネージが描くエッチング作品のような美しいピンヘッドだ。ややブラウンがかったグレーのトーンはそれこそ、古代遺跡のような佇まいである。1950年代のナポリを歩く紳士たちのスーツ姿が目に浮かぶ。あの熱狂と郷愁、そして今マエストロとして名を馳せる偉大な職人たちの原点。
50年代の生地は決して柔らかくはない。薄手に感じるほど凝縮されたウーステッドなのに、重さは350g/m以上ある。旧式の織機で途方もない時間をかけて織り上げられたビンテージの中でも、これほどの目付けの良さを感じたことはない。
そしてこの強さにはイタリアの歴史を感じずにいられない。あの戦後の貧しさと目を見張る経済成長の合間に、彼らはどんな困難にも屈しない力強いスーツを求めたのだ。
果たして1953年製のドラッパーズがこの世界に、あとどれだけ現存しているだろうか?
素晴らしいことに、この貴重なビンテージは3メートルある。つまりジャケット単体ではなく、スーツ着分だ。
この美しく稀有な50年代のビンテージをスーツに仕立て、白いシャツとジャガードシルクのネクタイを締めた時、私たちはもう一度ナポリを「再発見」するだろう。そしてその後二度とナポリ仕立ての本質を見失うことはないはずだ。